写真:岡崎 利明

 これまでシングル向けマンションやホテル事業などを手がけてきましたが、最初に家業の繊維会社を継いだのは大学を出て3年目、25歳の時でした。経営書などに学んで、得意先を格付けしたり、生産性向上を追求したりと改革に取り組みました。しかし、周りの社員は全然ついてきてくれません。やったことは今でも間違っていなかったと思いますが、後で振り返ると態度が傲慢だったんですね。結局は数年で家業を手放すことになりました。

 その反省から、仕事に成功している人は何が違うのかを探ってみることにしたのです。同じことをしているのに、成功している人もいれば、失敗する人もいる。単純に言えば、ツキがあるかないかの違いなのでしょうが、よくよく見てみると、成功する人というのは感性が豊かで、人間力にも溢れている。それを見て、事業に成功するだけでなく、人間的にも成功する人を目指さなければいけないと気づきました。

 自分自身の感性を磨き、人間力を高めるにはどうすればいいか。まず大切なのは自分で考え、自分で行動すること。それによって周囲の人に感動を与え、自分もまた感謝し、感激する。この繰り返しで感性や人間力は高まっていくのです。いろいろと考えるうちに、「自律型感動人間」という造語が思い浮かびました。それを目指せばいいじゃないか、と。

 バブル崩壊後、資産価値が下がって事業が窮地に陥り、1日で円形脱毛症になってしまうほどのストレスを味わいました。仕事をしていても面白くないし、気持ちは暗くなる。でもある日、夜遅くに会社に戻ったら、社員が一生懸命に働いてくれていました。ボーナスも満足に支払えないのにです。

 自分は周りに生かされているんだと思うと、感謝の気持ちが生まれ、再び使命感がわいてきました。そしてそれが「やるぞ」というエネルギーとなり、ピンチをチャンスに変えるアイデアも生まれてくる。やはり自律型感動人間こそ、事業や経営をするうえでの一番の基本だと確信したのです。

 自律型感動人間とは、私自身が目指すものであると同時に、社員に求める人材像でもあります。社員にとっては、給料や休暇の多さ以上に、自分の成長を実感できることが一番の喜びであり、幸せです。それを実現することで組織も幸せになり、ひいてはお客様に感動を与えられるようになります。ですからCS(顧客満足)の前に、ES(従業員満足)が大事なのです。

 自律型感動人間を育てるために最も重視しているのは、上司と部下との対話です。新入社員を例に挙げると、まずその人の長所を明らかにする。笑顔が素晴らしいとか、声が大きいとか、そんなことでもいいのです。上司はそれを伝え、大いに伸ばしていくことで部下の自信につなげるのです。自分に自信を持って初めて、自律型で動けるようになるからです。

 今では、自分の感性と人間力を磨こうという姿勢が会社の芯となっています。それが外部機関の調査で顧客満足度1位という評価につながっているのだと思います。(談)

日経ビジネス2012年9月3日号 132ページより目次

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