途上国における食料は、社会の安定にかかわる重要な資源です。中国でもこれまでは政府が管理し、外資企業にはチャンスが少なかった。しかし、需要が勢いよく発展する中で、足りない部分は外資から、というスタンスに変わっています。市場は持続的に大きな成長を続けるでしょう。

 即席めんなどの包装食品産業はこの30年間、最も発展してきた業界の1つです。常に経済成長率の1.5~2倍で成長してきました。この市場は最低限のカロリーを満たす食品と、栄養価や付加価値の高い商品の2つに分けられます。前者の今後の成長率は経済成長率の1~1.5倍程度で、低価格で商品を提供する規模や、味を現地化するノウハウが求められますから、外資のプレーヤーが参入しにくい。

 一方、付加価値の高い食品の市場、例えば菓子類や飲料は経済成長率の1.5~2倍のペースでこれからも伸び続けます。ここは世界中の企業にチャンスがあり、各国が中国を狙っています。同じ東洋の味という点で、日本の食品が中国で定着する可能性はあります。

 ただ、難しさもあります。実際に成功している外資系メーカーはほとんどない。我々は台湾から中国に事業を広げてきましたが、日本や韓国も台湾同様に市場が小さな「島国経済」です。一方、中国は「大陸経済」。市場は巨大で高成長、その分リスクが非常に高い。私自身、中国のリスクを読み切れているとは言えません。当社は現在、即席めんを中国で年間134億食販売し、過半のシェアを握ります。それでも事業は「点」と「線」の広がりしか持たず、「面」にはなっていない。あまりに広大で、面で捉えるには非常に長い年月が必要な一方、地域ごとの需要の変化に機敏に対応するスピードも求められます。

 ただ、独力で事業をしようとする外資企業に限って、タイムリーな需要の把握が遅れていると思います。どれほど圧倒的なノウハウがあっても、食は文化。中国市場に擦り合わせるには時間がかかります。だからこそ単独での進出にこだわらず、「他力」、つまり他社との提携戦略を柔軟に駆使すればいいのです。当社ではこれまでアサヒビールなどと提携し、今度はカルビーやプリマハムと合弁会社を作ります。日本企業は高い生産技術を擁していますが、中国市場に合った柔軟性やスピード感をもっと持ってほしい。

 日本には調和を重んじ、忍耐強い国民性と文化があります。戦後の経済成長の中で世界第2位のGDP(国内総生産)を持つ国になり、今も第3位を保っている。私も非常に尊敬しています。一方、上場した大企業が増えたせいか、オーナー経営者が不足し、果敢にリスクを取って現状を変える精神が乏しくなっているようにも思えます。経営に必要なことは不断の改革です。私も部下たちには、「決して成功はしていない」と言い聞かせています。日本企業には厳しい挑戦の時かもしれませんが、日本企業は自分たちが何をすべきか、本当は分かっているはずです。(談)

日経ビジネス2012年8月27日号 31ページより

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