中国内陸部を中心に低価格車シフトが鮮明になってきた。販売上位には10万元(約125万円)前後のクルマが並ぶ。競合は激しく、中国を収益源にできるメーカーは限られそうだ。

 世界最大の規模を誇る中国の自動車市場で、ある構造変化が緩やかに、しかし着実に起きている。より小型、より低価格なクルマへのシフトだ。乗用車販売ランキングで米ゼネラル・モーターズ(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)が上位を占める構図は変わらないが、大半のクルマの販売価格が約10万元(約125万円)に集中している。

 一時はトヨタ自動車の「カローラ」や「カムリ」、ホンダの「アコード」など日本の主力車種がトップ10に名を連ねていたが、現在はやや順位を下げている。販売台数は総じて増加基調だが、10万元クラスの小型車にシェアを奪われている格好だ。

 クレディ・スイス証券の高橋一生アナリストは「内陸部にモータリゼーションが進んだことによる当然の帰結」と話す。主要都市の総消費額を戸籍人口で割った「1人当たり年間消費額」は上海市の約4万3000元(約54万円)に対し、内陸部の四川省・成都市では2万1000元(約26万円)余り、青海省・西寧市は1万500元(約13万円)ほどにとどまる。「安いクルマ」への選好が高まるのは自然だ。

東風日産乗用車が今春開催の北京モーターショーで価格を公表した「ヴェヌーシア」。内陸部を狙う

 2009年の販売ランキングを見てもBYDの「F3」(販売価格5万~6万元=約62万~75万円)や上海GMの「エクセル」、北京現代の「エラントラ」が上位を占め、もともと低価格志向は強い。東風日産乗用車が「ヴェヌーシア」ブランドで6万元台の新車を売り出すなど、その傾向は一段と強まっている。5~6年後には内陸部でも買い替え需要が中心になると見られ、この価格帯のシェアが高まる公算は大きい。

成長鈍化で厳しさ増す市場

 中国汽車工業協会によると、2012年1~7月の乗用車の販売台数は873万台と前年同期に比べて7.5%増加した。比較対象の時期が多少ずれるが、1~6月の主要自動車メーカーの売上高は前年同期比で5.8%増にとどまっており、車種構成の変化が売り上げに影響を及ぼした可能性がある。

 商用車も含めた1~7月の自動車販売台数は1097万台と前年同期比で3.6%増にとどまった。単純な年換算では1880万台となり、2000万台の大台乗せは2013年に持ち越しになる公算が出てきた。また、メーカーが抱える在庫は7月末で73万台と1カ月で5万台近く増えている。景気減速という循環的な要因もあり、短期的には市場環境は厳しさを増している。

 マツダは他社による値下げ攻勢などが響き、4~6月の中国販売台数を4万6000台と前年同期比で12%も減らした。7月31日の4~6月期決算発表で尾崎清・副社長は「今年度上期(4~9月期)のマイナス要因が『為替』と『中国』。中国ではメーカー各社がインセンティブを積んでおり、マツダも販促を強化していく」と述べている。

 トヨタ自動車の伊地知隆彦・取締役も「中国市場にはこれまでの勢いはなく、減速感が出ている」と警戒感をあらわにする。スピードは緩やかになったものの、依然として成長が続く中国市場をないがしろにはできない。一方で競争は激しさを増し、収益源にできるメーカーは限られる。GM、VWが確固たる地位を築く中で、日本メーカーにとっては悩ましい状況が続きそうだ。

(張 勇祥)

日経ビジネス2012年8月27日号 12ページより目次

この記事はシリーズ「時事深層(2012年8月27日号)」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。