伸び悩む新車需要を尻目に、カーシェアリング市場は急拡大。パーク24とオリックス自動車の2強は法人向けに力を注ぐ。トヨタなど自動車各社も新車需要喚起の手段として注目する。

 「ひょっとしたら、世界一安いかもしれない」(オリックス自動車の池田学カーシェアリング部長)。業界2番手の同社が実施した今年4月の価格改定によって、国内大手各社のカーシェアリング利用価格は平日1時間当たり800円で並んだ。これは、カーシェアが先に普及した米国と同水準である。

 現在、カーシェア市場は前年比190%で成長しており、オリックス自動車と業界最大手である駐車場運営のパーク24との合計シェア(台数ベース)は既に8割強と見られる。2強による寡占化は、さらに進みそうだ。

 半面、競争の激化から事業を撤退する企業が後を絶たない。7月末には中古車販売大手のガリバーインターナショナルが撤退した。実はパーク24ですら、同事業単体の黒字化をまだ実現していない。中堅以下の事業者には厳しい環境であるのは間違いない。

 今後、生き残りのカギを握るのは価格より規模だ。カーシェア事業者にとって収益確保のために取り込まなければならないのは法人顧客である。彼らが事業者に求めるのは「何よりも拠点数の多さをはじめとする利便性」(パーク24のグループ企画部の野澤夢実課長)。必要な時に近隣の拠点でクルマを利用できなければ、たとえ価格が安くても業務用途には向かない。

 カーシェア市場が立ち上がった2000年代前半、事業者のターゲットはクルマ離れが進む若者中心の個人だった。しかし、それだけでは平日の稼働率は上がらない。くしくもリーマンショック以降は企業が経費削減の一環として社用車を手放し始めたことで、カーシェアのニーズが高まってきた。パーク24は地方の中堅都市への展開を急ぐ。既に21都道府県に進出しており、「出張先に拠点が必ずあるようにする」(グループ企画部の野澤課長)ことを目指す。

 オリックス自動車は今年3月、レンタカーとカーシェアの法人営業部門を1つにまとめた。パーク24も駐車場とカーシェアの営業部門を統合させている。両社はグループの総力を結集し、覇権争いに挑む。

トヨタは札幌で開始

自動車メーカーは、新車需要を食いかねないカーシェアリングとの共存を模索

 そんな市場への見方を変えつつあるのが自動車メーカーだ。従来、新車需要を食いかねないカーシェアを危険視していたが、「今年に入ってから、自動車メーカーとの距離感は縮まりつつある」(パーク24の野澤課長)という。

 ダイハツ工業は今年1月、新型車両10台をカーシェアの拠点に無償提供して、サービスの利用者から車両に関するアンケート結果を受け取るという試みを始めた。独BMW日本法人は試作EV(電気自動車)を提供し、実証実験に7月20日から乗り出した。

 7月末にはトヨタ自動車が系列のレンタカー会社でカーシェア事業を開始。現状では札幌市内の2カ所で展開中だが、「近い将来10カ所程度まで拠点を増やす」(同社広報部)。

 メーカーがこうした取り組みを進めるのは、新車購買につながるマーケティングとしてカーシェアを捉え始めたからだ。パーク24傘下の事業会社、タイムズ24が6~7月に行った調査では、10~20代の利用者が「クルマの購入意欲あり」と回答した比率は、利用前後で比べると49.9%から86.2%へと跳ね上がる。

 ある自動車メーカー幹部は「新車を買ってくれない以上、まずはクルマのある生活を楽しんでもらうしかない」と語る。メーカーにとって苦肉の策かもしれないが、カーシェア市場には追い風になりそうだ。

(上木 貴博)

日経ビジネス2012年8月27日号 13ページより目次

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