作家、有吉佐和子が『恍惚の人』で、自宅介護の悲劇を描いたのは1970年代のこと。徘徊や幻覚症状を起こす老人に振り回され、家族生活が破綻していく。ある日、息子がこうつぶやく。「パパも、ママも、こんなになるまで長生きしないでね」それから40年、日本の各地には、様々な「老人ホーム」が建てられてきた。老後の選択肢が増え、有吉が描いた絶望は回避されたかに見える。だが、財政が逼迫し、揺れ動く政策の上で、施設数が増殖してきた。カネが回らず介護現場は荒廃し、企業の参入意欲も減退している。そして今、ホームで生活する人々は、こうつぶやく。「こんなに長生きしなければよかった」と。2042年、高齢者4000万人時代が到来する――。その時、全国民が介護に巻き込まれる窮状を逃れる処方箋はただ1つ。老人ホームを中心に、「高齢者が価値を生む時代」を創り出すことだ。
老人ホーム革命

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