トヨタ自動車とホンダがエコカーの使用済み電池を有効活用。レアアースなどを抽出して、再び電池に使用する。貴重な鉱物のリサイクルで、持続的な成長を目指す。

 トヨタ自動車とホンダが、HV(ハイブリッド車)の電池に使われるレアアース(希土類)やレアメタル(希少金属)の再利用に本腰を入れ始めた。

 HVやEV(電気自動車)など電動車両の市場規模は2030年に現在の20倍以上の約3500万台に達するとの予想もあり、レアアースとレアメタルに対する需要は今後高まる見通し。だが近年、中国がレアアースの輸出を制限し、ロシアがレアメタルの一種であるニッケルの輸出税を引き上げるなど、新興国が鉱物資源を囲い込む姿勢を強めている。

 HVをはじめとする電動車両をエコカーの本命と位置づける日本の自動車メーカーにとっては、鉱物資源の安定的な調達が課題となっている。

17種類のレアアースを抽出

 ホンダは6月20日、HVの使用済みニッケル電池からネオジムやランタンなど17種類のレアアースを抽出し、電池の原料として再利用すると発表した。系列のディーラーで交換された電池を回収し、提携先の金属材料メーカー、日本重化学工業のプラントで抽出する。さらに現在、HVのモーターやリチウムイオン電池からもレアアースを抽出する技術を開発中だ。

 一方、トヨタは2年前から電池の引き取りセンターを運営し、トヨタ系列の販売店や解体事業者から出てくるHV用ニッケル水素電池を回収している。豊田ケミカルエンジニアリングや住友金属鉱山、プライムアースEVエナジーと組んでニッケルを抽出し、HV用電池の原料として再び使用する事業を展開中である。

 これと並行して、トヨタは使用済み電池で蓄電システムを構築し、愛知県内のディーラーで試験的に運用している。回収した電池を組み合わせれば、自動車用途に比べて重量や体積に制約の少ない定置用蓄電システムとして利用できるものが多いという。トヨタは将来、企業などに対する蓄電システムの販売事業に乗り出すと見られる。蓄電システムとして使い終わった電池からはニッケルを取り出し、HV用電池の原料として再び利用する。

ホンダが1999年に発売したHV「インサイト」の初代モデル

 トヨタやホンダがHVの販売を始めてから13~15年が経過した。廃車として解体処理するHVも徐々に増え、鉱物資源を有効活用するサイクルを構築する時期に差しかかっている。

 EVの使用済み電池でも、蓄電システムへの再利用が進み始めた。EV用電池は5~10年間使用すると、容量が落ちて交換の時期を迎える。ただし、「EV以外の用途では、まだ十分に使い道が残されている」(日産自動車の広報部)という。

 日産はEVから取り出したリチウムイオン電池を、企業などに電力を供給する蓄電システムに組み込み、販売する計画だ。2016年頃の事業化を予定する。子会社のフォーアールエナジーと組んで現在、横浜市の日産本社で蓄電システムの運用実験に取り組む。太陽光発電で得られた電力を蓄電システムでため込み、EVに給電する。

“埋蔵量”は年々増加

 三菱自動車も愛知県岡崎市の工場で、EVの使用済みリチウムイオン電池を蓄電システムに使用している。風力発電や太陽光発電などで得られた電力をためて、工場に供給する。実験を通じて電池の性能などを評価し、事業化を模索する。

 HVやEVの普及とともに、使用済み電池やモーターが増えており、貴重な鉱物資源が眠る「都市鉱山」として無視できない存在になってきた。

 将来、新興国が鉱物資源を囲い込む姿勢を一層強めた時、電池などのリサイクルで原料を確保する体制を整えているかどうかが、HV・EVの安定生産を左右する重要なファクターの1つになるかもしれない。

(吉野 次郎)

日経ビジネス2012年7月2日号 14ページより目次

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