ランキングの下位には、広大な国土を持つ米系、中国系が並ぶ。ただこれらのエアラインも、サービス競争と無縁ではない。日本人客獲得に向けて、サービス向上に乗り出している。

 「米国人は欲しいものがあれば自分から要求するが、日本人は声をかけられるのを待っている。目が合ったら、『何かご用ですか?』と尋ねてみてください」。今年5月、デルタ航空で行われた、客室乗務員への講義の1コマ。ただしレクチャーするのは客室乗務員の教官ではない。日本人の営業担当者だ。

 同社は21位。「客室乗務員が一切構ってくれないので静かでよい」(49歳、部次長)という意見の一方で「客室乗務員の態度が横柄」(63歳、取締役・執行役員)、「機内のサービスがガサツ」(40歳、係長・主任)という声が散見された。米系エア全般に言えることだが、接客がドライという印象は否めない。

 デルタ航空は日本便強化のため、ここ数年日本語を話せる客室乗務員を継続的に採用している。年内には1便当たりの人数が日本路線全便で2人から3人に増える見込みだ。これに伴って客室乗務員によるサービスの見直しを実施。米国本社からの強い要請で、日本の営業マンが講師として派遣された。

 「営業担当者は、客室乗務員よりも顧客からの不満をじかに聞かされている。常に矢面に立っている彼らに直接話をしてほしいとのことだった」(日本地区営業本部長の伊藤正彰氏)。米国人の客室乗務員も、教官が話すいつものトレーニングとは目の色が違ったという。「米国人客室乗務員はもともとサービスをするのは好きだが、搭乗客に“かしずく”という概念がない。日本人が本当は何を望んでいるのか。言葉に加えて日本文化も教えることで、理解度を深めてもらうことが狙い」(伊藤氏)。

 デルタ航空と合併する前のノースウエスト航空は、成田空港をハブ拠点として、合併後も多くの日本発着便を持つ。日本攻略に向け、踏み込んだサービスの改善に力を入れ始めている。

 今回の調査で特に評価が低かったのが中国系の3社。スコアはいずれも大きくマイナスに振れた。「ビジネスの空席に客室乗務員が寝ている。機長がお菓子を食べに出てきて、口にくわえて席に戻る。これは異次元の世界だ」(27位の中国国際航空・54歳、部次長)、「搭乗後に席が足りないからと、トイレ前に消火器の箱を置いて座らされた。同行していた祖父は親切な方に席を譲っていただいたが、離着陸時もシートベルトなしで非常にスリリングだった」(29位の中国東方航空・41歳、一般社員)など、非常に強い不満が数多く見られた。

中国南方航空では、昨年日本人の客室乗務員を30人体制に。日本人旅客向けに、ようやくサービスを拡充し始めている(写真:山本 琢磨)

 28位の中国南方航空も、「物を配るにも無愛想で、渡すのではなく投げる感じだったり、遅延しても何の説明もない」(56歳、部次長)、「機内が汚い、サービスが悪い。笑顔がない、無愛想」(49歳、その他)と同様の回答が集中。日本支社長の呉国翔氏は、「中国系のイメージがよくないことは気づいている。真摯に受け止めて改善したい」と反省の弁を口にする。

 ただ、今後はこういった不満が多少改善されるかもしれない。呉氏が日本に赴任したのが1年前。「自分が就任したことで売り上げを伸ばしたい」と矢継ぎ早に改善策を進めている。

 まずは日本人客室乗務員はこれまでわずか5人だったのを、昨年30人に増やした。また、中国国内に日本語のコールセンターを設立し、日本人を派遣して教育をスタートさせている。さらに、不評だった機内食の改善にも着手。これまでは中国で作られた機内食を搭載していたが、JALの機内食も作っているティエフケーなどとの契約を拡大し、今は多くの成田発の便に納入されている。「改善は1日2日でできるものではないが、取り組みは着々と進めている」と、呉氏は汚名返上を誓っている。

日経ビジネス2012年7月2日号 33ページより

この記事はシリーズ「特集 世界の空、争奪戦」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。