注:ジュンク堂書店池袋本店のビジネス書の販売上位。調査期間は2012年6月4~10日。価格は税込み

 電機業界を中心に大規模なリストラ、人員削減の発表が相次ぎました。こうした世相を反映して、受け身ではなく前向きに仕事のスキルを身につけるためのビジネス書や自己啓発書が上位にランクインしています。

 特に経営者の視点から書かれた書籍が目立ちます。一般社員も企業幹部の考えを理解して、上司の要求と評価を想定して仕事を進めようと考えているのでしょう。そうしないと「会社で生き残れない」との危機感があると思います。

 8位の『いまから、君が社長をしなさい。』は、架空の人物になりきって、制限時間内に多くの案件を処理するビジネスゲームの方式「インバスケット」で、中小企業の社長が直面しそうな問題の解決法を考えていきます。

大和書房
1575円
ISBN978-4-479-79343-4

 この思考法を推奨する著者の鳥原隆志氏はインバスケットに関する書籍をいくつか出していますが、今回、社長を想定したところが人気の秘密だと思います。アパレル業界に勤めていた45歳の主人公がリストラに遭い、ハローワークで仕事を探すがなかなか見つからない。そんな折、菓子メーカーの社長の求人票に出くわすという設定です。面接に行くとその会社が抱えている20の未処理案件について社長としての解決法を問われます。

 課題は新商品企画、顧客のクレーム対応、社員の退職相談など多岐にわたります。経営者にとって参考になるのはもちろんですが、一般社員にとっても会社の経営を自分のこととして考えるのに役立つでしょう。

 10位の『道をひらく』は1968年発刊のロングセラーです。松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助氏の日々の感懐から121編を各2ページでまとめたもの。社会人としての原点を探ろうとしているのか、新年度が始まる春先に売り上げが伸びる定番書です。

 大企業の社長の“お言葉”というより、上司が部下に語りかけているような文体で読者を引きつけます。例えば「仕事というものは勝負である」という言葉があります。一般社員であれば「仕事は上司から言われたことをそつなくこなすこと」と考えているかもしれません。自分の仕事のやり方を経営者や上司の視点から見直すことができます。

(聞き手は 宇賀神 宰司)

日経ビジネス2012年7月2日号 60ページより目次