「ブロックバスター(大型医薬)を生み出せるかもしれない」。日東電工の丸山景資・執行役員は、興奮を抑え切れない。肝硬変など臓器線維症と呼ばれる病気の治療薬に関して、広範囲の特許を日本、オーストラリア、中国に続いて米国で取得したためだ。

 治療成分を的確に患部まで送り届けるDDS(薬物送達システム)に関する特許だ。線維症の患者は全世界で約4000万人と多い。開発中の薬は遺伝子に働きかける仕組みで、従来は望めなかった根治も期待できるという。

 札幌医科大学の新津洋司郎・特任教授と共同開発を進めてきた。2013年から肝硬変の臨床試験(治験)を米国で始める。治験の段階が進めば、製薬会社との協業や買収も検討する。

 遺伝子に働きかける核酸医薬は有力な次世代医薬品として期待されてきた。しかし、スイスのロシュが撤退するなど暗雲が垂れ込めていた。患部に送り届けることが難しいという弱点が立ちはだかったためだ。日東電工のDDS特許取得はここに一石を投じるものだ。

 電子部材のイメージが強い日東電工だが、医療用粘着シートや経皮吸収型テープ製剤なども手がけている。2011年には逆風の中、核酸医薬の受託製造を手がける米企業も買収した。異業種企業の執念は、医薬品業界の常識を覆せるだろうか。

(広岡 延隆)

日経ビジネス2012年6月18日号 20ページより目次

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