自動車のサンバイザー部に取りつけた装置が、ルート情報などを鮮明に浮かび上がらせる。そんなHUD(ヘッドアップディスプレー)を搭載するカーナビをパイオニアが実用化。視線移動が少なくなれば、安全性も増す。精密地図やレーザーなどの強みを凝縮した。

HUDを搭載したカーナビの概要
走行ルートを示す緑色の矢印や先行車の情報、コンビニエンスストアなどのマーク(アイコン)は、走行に伴ってリアルタイムに変化する。発売は7月下旬の予定。価格はオープンだが、実売予想価格は30万~32万円前後



パイオニアは10年以上前からカメラを使った位置認識技術を磨いてきた。写真は車載用のペンギン型カメラ
3色のレーザーを高速で動かして描画する。画像のない部分は視線が通る

 クルマの運転席に座る。視界のやや上方、通常ならサンバイザーがある部分に、透明なポリカーボネート樹脂でできたディスプレーがある。大きさは縦7.5cm、横26cmほどだ。

 上の写真にあるように、緑色の矢印は案内地点までの道順を表し、途中にあるコンビニエンスストアなどの目印も表示する。前方を走るクルマとの距離や、安全な間隔なども推奨してくれる。実際には運転者の3mほど前方に画像が浮かぶように見える。ディスプレーそのものは透明なので、運転者の視界を妨げないのもメリットだ。

 目的地にたどり着くことを考えれば、情報量は十分。音声案内と組み合わせると、ダッシュボードに取りつけたカーナビゲーションのモニターに視線を移す必要を感じないほどだ。

 このサンバイザー部にある樹脂板をHUD(ヘッドアップディスプレー)と呼ぶ。HUDを採用した市販カーナビは、この製品が世界初だ。

 HUD自体は旅客機などで導入が進んでいるほか、独BMWやトヨタ自動車などが一部の車種に導入している。ただ、クルマでの搭載例では簡単な速度表示など機能は限定的で、画像そのものも小さかった。

 パイオニアの製品も「運転者の視線移動をできるだけ減らす」(カーエレクトロニクス事業統括部の黒沢敦部長)ことをコンセプトとして開発しており、安全性の向上が大きな目的の1つ。降雪や濃霧などの悪天候で視界が悪い場合などは、より効果的だろう。

 ただ、パイオニアの狙いは安全性の向上だけにとどまらない。道順を表す矢印などのCG(コンピューターグラフィックス)画像と実際の風景が連動する「AR(拡張現実感)」をHUDカーナビに持ち込み、より直感的なナビゲーションを楽しめる。高速道路を走っている時の渋滞状況なども、容易につかめる。

 HUDの目新しさに関心が向かいがちだが、この製品が成り立つためには欠かせないポイントがいくつかある。

 まず、先行車や信号などの情報を的確に把握すること。このカーナビには前方を撮影するカメラを取りつける。撮影した映像を解析し、先行車や道路標識、大型ビルをはじめとするランドマークなどを検出する。

 富士重工業の運転支援システム「アイサイト」に代表されるように、事故回避や車庫入れの支援などを目的にカメラを設置するケースは少なくない。パイオニアは1997年頃から位置認識技術を磨いており、カーナビメーカーの中では一日の長がある。

 ペンギン型カメラは2006~07年頃のもの。信号を内蔵カメラで捉え、赤なら胸部に組み込んだLED(発光ダイオード)が赤く光り、青信号なら青く光る。車内の揺れ具合も探り、運転が荒い場合は不愉快そうに羽をばたつかせる。今では信号だけでなく、車間距離や先行車の走行状況、車線までも検知することができる。

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