楽天とセブン-イレブン・ジャパンが、物流改革に取り組み始めた。宅配をブランド認知の拡大と混載物流での効率化に使おうとしている。ヤマト運輸など宅配大手もうかうかとはしていられない。

 EC(電子商取引)業界と小売業界の両雄である楽天とセブン-イレブン・ジャパンが、相次いで物流改革に取り組んでいる。消費者が購入した物品を自宅に配送する宅配分野でのことだ。

 この分野は小口配送が中心で、物流最大手のヤマト運輸がトップシェアを握ってきた。国土交通省のデータによれば、重量30kg以下でトラックを利用した宅配便では、ヤマト運輸が42.2%のシェアを持つ。だが楽天、セブンの進出で、その勢力図が変わる可能性も出てきた。

年内に23区全域に拡大
楽天マートの配送地域

「楽天配達員」が誕生?

7月に開業する楽天マートでは、生鮮食品を利用者の自宅まで宅配する(写真:的野 弘路)

 まず楽天は、7月からインターネット経由で注文した生鮮食品を自宅まで配送するネットスーパー「楽天マート」を開業する。野菜や海産物、精肉などを販売するほか、楽天市場で取り扱う一部商品も同時に販売するという。

 当初は東京都の豊島区、北区、板橋区、練馬区の4区で展開し、年内には東京都23区全域に拡大。さらに来春には東京都内、2013年中には関東全域までサービス提供エリアを拡大していく計画だ。

 同社はこれまで自らの物流網は持っていなかった。同社の主要事業である仮想商店街「楽天市場」では、出品業者が独自に配送業者を指定し消費者宅までの宅配を依頼してきた。また、楽天市場に出店する複数店舗が取り扱う日用品を一括で配送する「楽天24」というサービスでは、ヤマト運輸にその商品配送を任せてきた。

 これに対して楽天マートでは、ヤマト運輸をはじめとした大手宅配業者ではなく、地場の配送業者と個別に提携していくという。

 目的は2つある。まず1つは楽天という「ブランド認知の拡大」だ。

 楽天マートで注文した利用者は配達員の姿を見て少し驚くだろう。というのも、彼らは「楽天」の2文字がプリントされたユニホームや帽子を身に着ける計画だからだ。楽天の武田和徳取締役は「楽天マートのユニホームを身に着けた顔なじみのスタッフが毎回届けることで、お客様に安心してもらえる。トラック自体を『楽天仕様』にする計画もある」と言う。ユニホームから配送車まで楽天の名を冠することで、同社ブランドの認知拡大を図る。

 もう1つの目的は「混載物流」による効率化だ。ネットスーパー業界は現状、薄利多売に苦しんでいる。そのネットスーパーに今あえて楽天が進出するのは、ひとえに楽天グループ全体での物流の効率化を目的としているためだ。これまでバラバラだったグループの商品配送を楽天マートの物流網に一本化できれば、その効果は大きい。きゅうり1本から届ける楽天マートの物流網を整備することで、同社のロジスティクス全体を改善できると目論む。

 宅配分野で大きなコストとなっているのは不在時宅配。配達員が何度も足を運ばざるを得ず、結果的に配送効率が悪化する。たが同社によれば、生鮮食品を注文する顧客は在宅している時間を厳密に指定する傾向が強い。そこで楽天24や楽天市場の商品まで混載して送れば、その分コストを抑えられると読んだわけだ。

日経ビジネス2012年6月11日号 10~11ページより目次