自力での世界展開に限界がある4番手以下のメーカーは“ビッグ3”以上に正念場だ。規模で劣るうえに国内生産比率の高さから円高が直撃し、大手との差は開くばかり。トヨタとの連携を強化する富士重、自主独立を貫くマツダ...。結果はどう出るか。

 「いったんは米国に力を入れ、中国はその後に回さざるを得ない」

 富士重工業は1年前、中国の自動車大手、奇瑞汽車との合弁会社設立を中国政府に申請したが、期限としていた今年3月末を過ぎても回答はなかった。世界最大の市場である中国での現地生産の棚上げは、中長期的な痛手だ。だが、5月8日の決算説明会に現れた吉永泰之社長の口調は明るかった。

握手を交わす富士重工業の吉永泰之社長(左)とトヨタ自動車の豊田章男社長(写真:AFP=時事)

 2012年度は連結売上高で前期比22%増の1兆8600億円、営業利益は52%増の670億円を見込む。技術力が評価され、販売戦略が当たったことが米国での成功をもたらした。同社株の16.5%を握るトヨタ自動車との安定した関係があったことも大きい。絶対的な後ろ盾を得て、富士重はクルマ作りに集中できるようになった。

 今年2月には、54年間続けてきた軽自動車の生産を終了。同じトヨタグループのダイハツ工業からOEM(相手先ブランドによる生産)を受けている。その代わり、軽自動車生産を打ち切った群馬県太田市の本工場では、トヨタと共同開発した小型スポーツ車「BRZ」(トヨタ名は「86」)の量産にこぎ着けた。BRZは5月中旬の段階で、納車が来年2月という人気ぶり。7年目に突入した両社の提携で最大の成果だろう。

トヨタが支え、米国で花開く

 今は順風満帆な米国でも長らくヒット車に恵まれず、米生産子会社の稼働率は上がらなかったが、2007 年にトヨタから「カムリ」の生産を受託し、採算面で助けてもらった。米国販売が回復した今、工場の年産能力を現行の17万台から近く20万台に増強する。

 トヨタという後ろ盾がなければ、富士重は中国を後回しにしてまで、米国に集中するという決断ができたかどうか。富士重の国内生産比率は73%と高い。円高が収束の気配を見せない中、一刻も早く海外生産比率を引き上げるために、合弁相手を代えてでも中国進出を果たそうとした可能性はある。事実、最近になって富士重には吉利汽車から20%前後の株式を持ちたいとの申し出があったと報じられた。

 自動車業界では企業規模が小さいと、開発力や生産力などあらゆる面で不利になる。それでも、日本では4番手のスズキ以下、現場でのカイゼンと技術力で乗り切ってきた。だが、ここ数年の円高に加えて、規模拡大に走る大手メーカーとの差は開くばかりだ。

 大手の後ろ盾を求めるか、自主独立を貫くか―― 。中堅の自動車メーカーは大きな決断を迫られている。

富士重工業の「レガシィ」(左)とマツダの「CX-5」。提携戦略の差が業績の明暗を分ける

向こう10年の車種を一括企画

 「責任は感じるが、今の経営陣はフォードから独立して初のチーム。中長期の構造改革に取り組みたい」

 2011年度3月期まで4期連続の連結最終赤字となり、財務立て直しのため3月に約1400億円の公募増資に踏み切ったマツダ。山内孝社長は5月の決算説明会で自身の経営責任を問われ、続投を決めた理由をこう説明した。

 蜜月関係だった米フォード・モーターの出資比率は、リーマンショックによって3割強から約2%まで低下。マツダは事業面でも独立色を強めざるを得なかった。フォードとの米国合弁会社での「マツダ6(日本名アテンザ)」の生産打ち切りを決定。米国向け後継車は山口県の防府工場で生産する。

 それでも山内社長は「新たな資本提携をするつもりはない」と言い続ける。イタリアのフィアットとのスポーツ車の共同開発など、他社と部分的に業務提携は結ぶが、かつてのフォードのように特定の1社の庇護は求めない。

 マツダもまた、国内生産比率が71%と高く、円高の影響を強く受ける。生産台数はトヨタの6分の1程度で、大手との規模のハンディは否めない。円高と規模のハンディを乗り越える切り札とすべく進めているのが、社内改革プロジェクト「モノ造り革新」だ。

 最大の特徴は、新車種の開発を10年単位とし、「向こう10年の消費者ニーズをデザインなども含めて予測し、その間に出す車種の企画をすべて固めておく」(金井誠太副社長)こと。これによって各車種の構造や生産工程を標準化しやすくなり、向こう10年にわたって高い生産効率を維持できる。コスト削減効果は開発投資で3割、エンジンの生産設備投資で6割に達する。

 主要部分の構造も一新した。エンジンはより高効率に、ボディーはより軽くして燃費を改善する「スカイアクティブ」技術を全車に搭載する。同技術を搭載し、2月に発売したSUV(多目的スポーツ車)の「CX-5」は1ドル=77円、1ユーロ=100円でも利益が出る。出足は好調で、発売から2カ月で年間目標を上回る1万6000台を受注した。

 だが、「モノ造り革新」のリスクも見逃せない。需要を読み間違えれば、開発・生産の軌道修正に多大なコストがかかり、逆に経営を圧迫する恐れがある。円高と規模のハンディに抗うには、それだけ無理をしなければならない。

 部品調達先の約4割が広島・山口両県の地場サプライヤーであることも、マツダが海外への大規模な生産移転などをためらう背景にある。「地方の経済と雇用にすごく責任を感じている」と山内社長。逆風の中、従来型の輸出モデルはどこまで通用するか。マツダは最後の挑戦者なのかもしれない。

日経ビジネス2012年6月4日号 44~45ページより

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