新興国の隆盛で、多極化しながら拡大する自動車の世界市場。韓国勢や欧州勢との対決が激しくなり、開発手法の転換も迫られる。日欧自動車メーカーの兼任トップが見据える、勝ち残りへの道とは。(聞き手は 本誌編集長 山川 龍雄)

写真:陶山 勉
カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)氏
1954年、ブラジル生まれ。仏ミシュランを経て、96年に仏ルノー入社。99年、日産自動車のCOO(最高執行責任者)に着任し日産リバイバルプランを策定、経営危機にあった同社の立て直しに成功する。2000年に日産社長、2001年にCEO(最高経営責任者)に就任。ルノーでは2005年に社長兼CEOに就任、2009年から会長兼CEO。「クルマに乗ればすべての悩みが吹っ飛ぶ」という、自他共に認めるクルマ好き。

 問 ここ数年、世界の自動車産業を見渡すと、独フォルクスワーゲン、韓国の現代自動車、そして日産自動車に勢いがあります。ほかの企業と何が違うのでしょうか。

 答 違いは分かりませんが、共通項は分かります。

 3社ともに、非常に重要な位置づけである海外市場で業績を伸ばしていること。次に、最高級車から中級車、低価格車まで商品をフルラインアップで持ち、すべてのセグメントで闘っていることです。

 そしていずれの企業も、規律の正しい組織を持っています。もちろん、その具体的な姿はそれぞれ国の持つ文化によって異なりますが。ドイツ文化、韓国文化もそうですし、日本も規律正しい文化ですよね。ビジョン、戦略、予算、それらと結果の間に一貫性があり、整合性があるということです。

マザー機能は日本に残る

 問 現在の日本の自動車メーカーの競争力を、どう分析していますか。

 答 強みから申し上げましょう。一口に日系メーカーといっても多様です。強いて共通項を言えば、第1にやはり非常に規律正しい組織があるという点です。

 自動車メーカーにとって、規律正しいことは大事なポイントです。様々な技術や能力、いろいろなサプライヤーや販売会社を集めて、すべてを組み上げていく。このような非常に複雑な業務をする場合、特に競争の激しい環境の中では、規律正しさときちんとした組織体制が競争優位につながります。これは日本の文化そのものだと思います。規律正しさというのは、日本人の性質ですからね。

 第2に言えることは、自動車業界というのはコンセプトを考えることも重要ですが、プロセス(工程)を作る業界なんです。プロセス志向、つまり、どのようにやるのかという手段を突き詰めるのです。ここでも、日本の文化の強みを生かすことができます。

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