日本を代表する優良企業にコマツを変えた坂根正弘会長。強みを磨き、経営を透明にし、超円高にも負けない収益基盤を築いた。コマツが標榜する「ダントツ経営」の神髄を語ってもらう。

写真:的野 弘路
坂根 正弘(さかね・まさひろ)氏
1941年、島根県出身。63年大阪市立大学工学部卒、小松製作所(現コマツ)入社。89年取締役、小松ドレッサーカンパニー(現コマツアメリカ)社長などを経て2001年に社長、2007年から会長。コマツを世界的な高収益企業に変えた。

 コマツは超円高と中国市場の急減速という逆風に直面しながら、2012年3月期に2ケタの増益を達成した。2013年3月期も増収増益を見込んでおり、売上高営業利益率は15%超になる見通しだ。建設機械の巨人、米キャタピラーを利益率で上回っており、製造業としては屈指の高収益企業となった。

 しかし、坂根正弘会長が社長に就任した2001年当時、コマツは深刻な業績不振にあえいでいた。会社を立て直そうと苦労と工夫を重ねていくうちに、様々な経営理論を自ら構築していく。たどり着いたのが「ダントツ経営」というキーワードだった。

 講演の依頼を頂くことが多く、最近は週当たり1.5回やっています。一般的な経営論ではなく、自分の経験から考え、自分で言葉を探して体系化したものですから、誰が聞いても参考にできる点があるのでしょう。

 こう話すと顰蹙(ひんしゅく)を買いそうですが、自分で自分の経営を「ダントツ」と言っていること自体、顰蹙を買っているだろうと思いますので、そのあたりは目をつぶっていただけるとありがたいですね。

 第1回は、「ダントツ経営」とは何か、ということから話をしていきましょう。まずは下のホワイトボードをご覧ください。一般に企業が目標とするであろう様々な経営指標を書き出してみました。この中で、コマツが最も重視しているのは、どれになると思いますか。この中の1つを目指すことが、ダントツ経営を実現することになります。この回答は、後ほど詳しく説明しましょう。

 ダントツ経営に至るまでには、いくつかステップがあります。製造業ですから、基本となるのが技術と商品になります。つまり「ダントツ技術」と「ダントツ商品」です。ライバルの追随を許さない圧倒的に強い商品です。

 ダントツ商品という呼び方は、私が名づけたのですが、コマツには、この遺伝子が脈々と受け継がれています。私が入社した当時、キャタピラーが三菱重工業と合弁会社を設立し、日本市場に参入してきました。当時のキャタピラーと言えば、仰ぎ見るような存在で、日本とは圧倒的な技術力の差がありました。「コマツは消えてしまうのではないか」と世間で言われたのも、無理がない話です。

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