完全民営化という“宿願”にまた一歩近づこうとしている日本たばこ産業(JT)。今年度中には政府が保有する株式の3分の1(=全株式の6分の1に相当)を放出する方向だ。

 6月末就任予定のトップ人事でも、木村宏社長の後任に内部昇格で小泉光臣副社長を充てる。旧大蔵省出身の涌井洋治会長は退任し、木村社長が会長に就く。今回の役員人事によって、取締役の中の大蔵(財務)省出身者はゼロとなる。

 木村社長は「あくまで人物本位」と説明するが、新たに社外取締役として、住友商事の岡素之会長や作家の幸田真音氏を招き、政府からの独立性は一段と色を増す。名実ともに政府の関与が薄まる一方で、今期からの中期経営計画は配当性向の引き上げなど資本政策を主体とし、一般株主を強く意識した内容となった。

 規制に縛られた日本国内の状況とは一線を画して、海外企業の大型買収で成功を収めてきた木村社長は、「自らの意思によって自己変革をしてきた歴史に誇りを持っている」と、6年の在任期間を総括した。

 旧国営企業の中で、JTは海外戦略を軸に成長と高収益を実現してきた「民営化優等生」。新体制では日本企業の枠を完全に脱し、世界の強豪と伍して戦う、グローバル企業としての戦略が求められる。

(北爪 匡)

日経ビジネス2012年5月7日号 20ページより目次

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