米家電量販最大手のベストバイが揺れている。

業績低迷、CEO辞任で迷走するベストバイ(写真:ロイター/アフロ)

 4月10日にブライアン・ダンCEO(最高経営責任者)が突然辞任し、同氏の「個人的な行為」について会社が調査していることが明らかになった。その後、「個人的な行為」として疑われる中身が、部下の女性との不適切な関係と会社資産の私的流用であることが報道された。

 ダン氏は28年間同社で働き、一介の店舗従業員からトップに上り詰めたことで知られる。自らの疑惑でその地位を失ったことが話題となったが、こうした疑惑がなかったとしても足場は崩れかけていたのかもしれない。業績不振に直面していたからだ。

 3月29日に発表した2011年12月~2012年2月期決算で、ベストバイは17億ドルの純損失を計上し赤字に転落した。通年でも12億ドルの赤字となった。

 決算発表の時点ではCEOの座にあったダン氏は、今後の巻き返し策を打ち出した。具体的には大型店50店を閉鎖し、400人の従業員を解雇する。併せて、モバイル機器を中心に品揃えする小型店を新たに100店出店するというものだった。

 競合だったサーキット・シティー・ストアーズが2008年に経営破綻し、ベストバイは業界の覇者となったかに見えた。だが、家電販売を襲った構造的な変化に絡め取られてしまった。

 その変化の1つはアマゾン・ドット・コムに代表されるインターネット通販の広がりだ。家電流通専門誌、トゥワイスのまとめによると、アマゾンは2004年には米国の家電売上高上位10社の圏外だった。それが2010年には4位まで躍進している。

 もう1つの変化はウォルマート・ストアーズやターゲット、コストコといった一般量販店の台頭だ。トゥワイスの同じ調査によると、2004年から2010年にかけてこの3社はいずれも家電市場におけるシェアを高めている。

価格はアマゾンより4.2%割高

 首位のベストバイもシェアを2.8ポイント上げたものの、それは新規出店の効果が大きい。「売り場効率は低下した」と流通系コンサルティング会社カンターリテールのアナリスト、ローラ・ケネディ氏は指摘する。

 パソコンや家電がコモディティー化するのと並行して、詳しい商品情報がインターネットで簡単に得られるようになった。消費者にとっては専門販売員のいる家電量販店で買う必要性が薄れつつある。

 もちろん店舗には、現物を目で見て、手で触れられるという利点がある。問題は、商品の確認は店頭で、実際に買うのはネットで、という消費者が増えていることだ。

 ベストバイに圧倒的な価格競争力があれば、わざわざネットで買う必要はない。では実際の価格はどうか。バークレイズキャピタルがウェブサイト上にある100品目を調査したところ、ベストバイはアマゾンより平均で4.2%高いとの結果が得られたという。

 地デジ対応やエコポイントが終了し、冬の時代を迎えている日本の家電市場でも、アマゾンや楽天をはじめとするネット販売が力をつけている。家電量販店同士の競争も激化し、各社は集客力向上を狙って店舗の大型化を加速させてきた。だが、消費者の動向次第では今後、ベストバイのように大型店への投資が経営の重荷になる可能性は否定できないだろう。

 百貨店や総合スーパー、郊外型ショッピングセンターなど、日本の流通業の各業態は、いずれも米国に追随する形で発展してきた。ダイエーを創業した故・中内㓛氏ら流通革命第1世代も皆、米国をモデルにしたことで知られる。日本の家電量販店は米国と同じ道をたどるのだろうか。

細田 孝宏のコラムは日経ビジネスオンラインにも掲載しています。
日経ビジネス2012年4月30日号 126ページより目次