日産自動車の業績が好調だ。2011年4~12月期は日系大手で唯一増収を達成した。日系トップに君臨するトヨタ自動車の背中が見えてきた。

 日産自動車の好調を印象づける決算発表だった。

 同社が2月8日に発表した2011年4~12月期の業績は、連結売上高が前年同期比4.3%増の6兆6984億円、連結営業利益が同4.7%減の4278億円。減益ではあるが、円高に加えて東日本大震災やタイの大洪水を思えば、その影響は軽微だ。むしろ日系大手でトヨタ自動車もホンダも減収に沈む中、日産のみが増収を果たした点が目を引く。

 だが、好決算にもかかわらず株価は下落した。決算発表を受けた9日の終値は前日比8円安の766円。取引時間中には754円まで下げる場面もあった。原因として考えられるのは、日産の慎重な態度を市場が嫌気したことか。

 本業の儲けを示す営業利益は通期見通しの5100億円に対して、2011年4~12月累計でその83.9%を稼ぎ出した。2011年4~12月累計で2660億円の純利益では、既に見通しの91.7%を達成している。普通に考えれば上方修正に踏み切ってもおかしくないが、通期見通しを据え置いた。日産は「欧州の信用不安を懸念材料として慎重に見た」(田川丈二・執行役員)と説明する。

 確かに不安要素はあるものの、他社に比べれば安定感は群を抜く。日産の田川執行役員も「特定の市場・地域に偏らないバランスの取れた成長に支えられている」と胸を張る。

 日本国内での2011年4~12月の販売台数は、市場全体が前年比11.3%減と大きく落ち込む中で、台数の減少を2.0%減に抑えた。他メーカーの幹部も「見習いたい」と漏らすほどの、迅速な災害対応が光った。

世界各地で満遍なく成長

 一方、米国での2011年4~12月のシェアは0.3ポイント増の7.8%。中国でも2011年1~12月の通年シェアを1.1ポイント増やし7.3%とした。ロシアの販売台数は4~12月で59.5%増、ブラジルは90.2%増だった。

 日産は仏ルノーとの戦略提携などが奏功して、日系トップに君臨するトヨタのライバルと言うにふさわしい実力を身につけつつある。

 1月25日、トヨタは傘下のダイハツ工業などを含むグループ全体の2011年販売台数が、前年比6%減の795万台だったと発表した。2月1日には、ルノー・日産が2011年に合計で802万台を販売したと発表。ルノー・日産がトヨタを抜いたかのように見える数字に関係者は驚いたが、近々傘下に収める予定のロシアのアフトワズを含めたもので、それを除けば739万台だった。

 そしてトヨタは2月3日、2012年の販売計画をグループ全体で958万台と発表した。日産も好調を背景に、生産能力の増強を図る。中国では昨年12月に、広州市で花都第2工場を竣工。2012年には中国の生産能力が前年比35.6%増の120万台に増える。さらに2013年後半にはメキシコのアグアスカリエンテス、2014年にはブラジルのリオデジャネイロ州に建設する新工場が操業を開始する計画だ。

 トヨタの伊地知隆彦・取締役専務役員は、東日本大震災やタイの大洪水の影響を除けば「1ドル=78円、連結販売台数780万台で連結営業利益は5400億円が今の実力値」と述べ、昨年3月に示した連結営業利益1兆円という目標への進捗は順調との見方を示す。日産が昨年6月に発表した中期経営計画「日産パワー88」も、実質的には1兆円の営業利益を目指すものだ。

 2011年、日産は災害などの突発事項への対応力が他社を凌駕することを示した。2012年は、同社に真に日本の製造業を代表する力があるのかが問われる。

(広岡 延隆)
日経ビジネス2012年2月20日号 14ページより目次

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