携帯電話大手3社のスマートフォン新製品が出揃った。NTTドコモは次世代通信規格「LTE」対応で追撃する。圧倒的な資金力と品揃えの「横綱相撲」は吉と出るか。

単一機種では久々の「100万台」の目標を掲げたNTTドコモの山田隆持社長。自ら陣頭指揮を執ってスマートフォンで反撃体制を整える
写真:都築 雅人

 「80万~100万台は売りたい」。11月24日朝、NTTドコモの山田隆持社長は東京・秋葉原のヨドバシカメラ店頭に現れ、こう宣言した。同日ドコモが発売したのは韓国サムスン電子製の新型スマートフォン「GALAXYSII LTE」。ドコモが米アップルの「iPhone」に対抗するフラッグシップ(旗艦)の最新機種であり、昨年12月にスタートさせた次世代携帯電話規格「LTE(サービス名はクロッシィ)」に対応させた初のスマートフォンだ。「実測で毎秒7~10メガビット(メガは100万)」(山田社長)のスピードが出る高速性が最大の売りだ。

 この日、山田社長はドコモ携帯のCMに出演している女優の堀北真希さんを伴って東京・有楽町のビックカメラもはしごした。「単一の機種の発売日に社長がこれだけ前面に出るのは異例」(ドコモ広報)のことだという。

 力が入るのには訳がある。今年10月にソフトバンクに続いてKDDIもアップルの人気端末「iPhone4S」の発売に踏み切った。日本で唯一iPhone「圏外」となったドコモはナンバーポータビリティー制度による加入者争奪で8万人が流出(10月)するなど草刈り場となったからだ。

 ドコモの反撃のキーワードは「高速」と圧倒的な「品揃え」だ。同社は来年2月までの冬春商戦で計14機種のスマートフォンを逐次発売する。そのうちGALAXY SIIを含めた4機種がクロッシィに対応している。

高い「100万台」の壁

 ドコモの石川貴浩プロダクト企画担当部長は、「GALAXYは最も高機能なスマートフォンの象徴的存在。『エクスペリア』(ソニー・エリクソン)は世界的なブランド感と独特の使い心地、『メディアス』(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)は高スペックながら薄型の洗練されたデザイン」と品揃えの狙いを話す。今年度スマートフォン850万台の目標に向けて大船団を組み、多様化するスマートフォンのニーズをつかもうと意欲的だ。

 ドコモがこれだけLTEへの移行を促す背景についてモルガン・スタンレーMUFG証券の津坂徹郎アナリストは、「急増するスマートフォン利用者をLTEに移行させて、逼迫するネットワークに余裕を持たせる狙いがある」と話す。事実、ドコモの前原昭宏ネットワーク部担当部長は「ドコモのデータ通信量は2015年には現在の約12倍になる。このためクロッシィのエリア拡大計画も2014年までに人口カバー率98%と大幅に上方修正 した」と言う。

 だが、果たしてドコモの目論見はうまくいくのか。津坂氏は、「80万~100万台という数値目標に驚いた」とも言う。GALAXYは確かにドコモの看板には違いないが、津坂氏の試算では、2010年10月に発売した初代のGALAXY S、今年6月に発売したGALAXY SIIの「いずれも100万台には達していない」(津坂氏)からだ。

 しかも料金問題も横たわる。LTEスマートフォンのパケット定額料金は現在キャンペーン価格で月4410円。ソフトバンクのiPhoneと同等の価格に設定しているが、来年5月1日にキャンペーンが切れると一気に5985円にはね上がる。ドコモ広報は「キャンペーン価格を変更するかどうかは現時点では未定」としているが、利用者にとってこの差は大きい。

 「次世代スマートフォン」移行を契機にネットワークと収益を一気に向上させるのか、あるいは定着させるために料金引き下げに踏み切るか。LTEはソフトバンクやKDDIも来年以降開始する。ドコモの選択は日本の携帯が次世代に移行できるかを左右する決断になりそうだ。

(編集委員 小板橋 太郎)

日経ビジネス2011年12月5日号 13ページより目次

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