北アフリカのアルジェリア第2の都市オラン近郊に来年、日産水量50万m3という世界最大規模の海水淡水化プラントが稼働する。このプラントの中核技術、海水から塩分を除去する特殊樹脂のRO膜(逆浸透膜)を受注したのが東レだ。

 東レが、過去にアルジェリアでRO膜を納めた海水淡水化プラントの能力と合算すると、造水量は320万人分の生活用水に相当する。アルジェリアの人口は約3500万人だから、来年には同国民の約1割に日本企業が水を供給する形になるわけだ。

海水を2000万人の生活用水に

 RO膜の穴は1ナノメートル(ナノは10億分の1)以下。人為的に開けるのではなく、樹脂の分子構成の隙間が穴となり、そこを水が通る。国土の砂漠化などで水不足に見舞われている国から次々と受注を得ており、それらを合計すると、2000万人分の生活用水を海水から生み出している計算だ。

 現在、東レのRO膜の塩分除去率は99%以上。飲み水としては十分な水準だが、除去率が高いだけではRO膜は商品にならない。例えば、膜を連続使用するうちに穴は目詰まりする。薬品洗浄が必要になるため、薬剤への耐性が不可欠だ。淡水化プラントを建設する地域に多い高温度にも耐えられなければならない。

 さらに耐圧性も欠かせない。通常、濃度の異なる液体があると、濃度の低い方から高い方へと移動しようとする。これを浸透と呼ぶ。ところが淡水化に必要な逆浸透では、逆に濃度の高い海水側から強い圧力をかけ、低い方に移動させる必要がある。RO膜はこの強い圧力に常にさらされる。

 厳しい条件をクリアした素材を開発できるのは、東レを除けば日東電工など世界に数社しかないのだ。

東レが製造するRO膜は海水淡水化プラントの中核技術となる(写真はアルジェリアのプラント)(写真:GE Water&Process Technologies)
MF膜、UF膜と呼ぶ地下水などを浄化できる膜を活用し、設計から施工、管理までを請け負う地下水飲料化システムを実用化。導入先は水道代を削減できる。
工学的な手法で地球の温度を下げる。地球温暖化がさらに深刻になった時に備えて研究が進む。例えば、成層圏にエアロゾルを流し、人工的に気温を下げる。

 こうした水ビジネス分野はこれまで、仏ヴェオリア・ウォーターグループなど海外の水メジャーが先行してきた。水メジャーはプラントの建設や運営を含めた総合力に強みがあり、東レがRO膜を納入する先の多くも、海外企業となっている。

 だが日本勢も今後、関連企業が手を組み、建設や運営までを一体的に手がけることで水メジャーを追撃する構えだ。既に今春、東レや日立プラントテクノロジーなどが日本の水処理技術をアピールする拠点「ウォータープラザ」を北九州市などに開設した。

 日本には、砂漠の緑化などでも有望技術が少なくない。

 例えば、宇都宮大学の研究者が開発し、栃木県のベンチャー企業、グリーンプロデュースが製造・販売する「クラピア」がある。

 イワダレソウを品種改良し、芝生の約10倍のスピードで増殖することが特徴だ。草丈が短いため、刈り込みの手間も少ない。さらに、クラピアの販売代理店の1社である出光興産は、中東で育成試験も実施した。淡水化プラントで作った水で育成したところ、通常の芝より必要な水の量は少なくて済んだという。

 地球上で人類が生きていくうえで欠かせない水と緑。その供給役となれば、日本は再び輝きを取り戻す。

日経ビジネス2011年10月10日号 44ページより

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