5月上旬、東日本大震災による津波で甚大な被害を受けた宮城県の沿岸部に、1台のマシンが運ばれてきた。地上に降り立ったマシンは、2本の腕を巧みに使い、折り重なった瓦礫を次々と片づけていく。このマシンこそ、日立建機の双腕作業機「ASTACO NEO(アスタコ ネオ)」だ。

 2本の腕を持つ油圧ショベルで、1人の操作員が、破砕や切断作業をする主腕(右腕)と補助作業をする副腕(左腕)を別々に操作する仕組み。コンクリートや鉄筋をつかみながら切断する、といった作業を同時にできるため、解体や分別作業に威力を発揮する。

 今回、被災地には5月、6月の2度にわたって投入され、津波で押し流されたコンテナの解体や、横倒しになった電柱の撤去などに活躍した。

 機械も人手も不足しがちな災害現場では、1台2役をこなす双腕作業機は強い味方になる。震災復旧で注目を浴びたこともあり、今後受注の拡大が見込まれている。

日立建機の「アスタコ ネオ」。その姿はザリガニのようにも、シオマネキのようにも見える
構造物に埋め込んだセンサーのデータを近距離無線通信技術を使って外部から読み出し、ひずみや腐食などの劣化度合いを測る。長期の維持管理に役立つ。
埋設したセンサーのデータを無線通信で読み出す。橋やトンネル、ダムなどの維持管理に活用される
体に装着することで身体能力を拡張、増幅するロボット。腕や足の力が大幅に強くなる。災害現場での救助活動や介護、工場での重作業などに活用できる。
監視カメラなどに映った人の顔の特徴を解析することで、年齢や性別を自動的に判別する。防犯や客層の分析などに活用できる。
観測されると壊れるという量子力学の原理を応用し、理論上は完全に安全な通信を実現する。光に情報を乗せて運び、送信者と受信者のみ暗号鍵を配信する。

約1秒で不審者の正体判明

 テロをはじめとする世界の犯罪の抑制にも日本の技術が活躍する。

 ネットワークに接続した数百台のカメラを用いて、効率的に警戒業務を行える日立製作所の「大規模監視システム」はその1つだ。

 人の顔や動きの有無などの情報を基に、重要度の高いカメラの映像を優先的に伝送する技術が特徴。これにより伝送容量の不足を解決するとともに、重要映像の判別を容易にする。

 さらに、過去に撮影した映像と類似した画像を瞬時に検索する独自の技術も導入する。不審者の顔も、「1億件規模のデータベースと照合して約1秒で検索できる」(中央研究所・知能システム研究部の影広達彦・主任研究員)。

 セキュリティーの強化と監視業務の省力化を同時に実現する技術であり、今後は空港や駅、大型商業施設、大規模オフィスビルなどの防犯対策として需要の拡大が期待される。

 「現在、実用化を目指している複数の案件がある」(影広氏)といい、数年内に実現する可能性もありそうだ。

 世界の治安は、日本の技術が守る。

日経ビジネス2011年10月10日号 42ページより

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