世界市場が「価格」を軸に変わりつつある中、日本企業の対応が遅れている。財務から見えてくるのは日本企業のコスト構造の硬直化。企業に内在する課題を解決しない限り、競争力の復活はおぼつかない。

 企業に内在する3つの六重苦の正体とは何なのか。

 「北米は(2009年末からの)リコール(回収・無償修理)問題でシェアが落ちた。その後、回復していたが(今年3月の)東日本大震災があり、在庫不足でまた落ちた。生産が改善するにつれ回復していたのだが…」

 11月8日、トヨタ自動車東京本社で開かれた2011年4~9月期の決算発表の席上、世界の市場別販売動向と見通しを聞かれた小澤哲副社長は、答えの大半を北米の説明に費やした。

 大規模リコール、東日本大震災と深刻な問題が相次いだトヨタ。米国市場でようやくシェアが回復に向かい始めた矢先、部品や完成車の輸出拠点でもあるタイで洪水被害が拡大した。小澤氏の頭の中は、米国市場でいっぱいだったのだろう。新興国市場には、ほとんど触れないまま会見は終わった。

世界の市場で激しい競争を続けるトヨタ自動車の豊田章男社長

 もちろん、トヨタにとって新興国市場が重要でないわけはないが、同社の長年にわたる世界戦略、そして業績の内訳を見ればそれも無理はないのかもしれない。北米市場は、圧倒的に重要な“稼ぎ頭”なのである。だが今、その構図がトヨタを苦しめ始めている。

 それは日本企業に共通する難題でもありそうだ。

日経ビジネス2011年11月28日号 33ページより

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