9月上旬にブラジルはサンパウロを訪れる機会があった。ほんの数日の滞在だったが、現地で案内してくれた複数の日本企業関係者から聞かされたのが、ここでも攻勢に出ている韓国自動車メーカーの話題だった。

ブラジル市場で存在感を増す現代自動車は大々的な広告作戦を展開

 「これを見てください。すごいでしょう」。そう言って差し出されたのは地元有力紙の「フォリャ・ジ・サンパウロ」。筆者が目にした日について言えば、1面には日本でもおなじみのサッカー選手、ロナウジーニョの写真の下に現代自動車のSUV(多目的スポーツ車)「サンタフェ」の広告(写真の左側)があった。そして数ページめくると、再びサンタフェ。今度は右ページの全面広告だ。

 同じ日の新聞に同じ商品の広告を複数打っているのに驚いていたら、これで終わりではなかった。さらに数ページ行くと今度は紙面の下半分を同社のSUV「ツーソン」の広告が占領している(写真の右側)。主要部品を輸入して現地で組み立てるノックダウン方式で作っているのだが、ご丁寧に「MADE IN BRAZIL」とのアピールまである。

 新聞を渡してくれた相手は「今日だけじゃないです。これがしょっちゅうなんですよ。日本メーカーは完全に押されてますね」。自動車で移動中に外を眺めていると、広告に出ていたサンタフェをしばしば見かけ、言われた通りだと実感する。

 ブラジルの乗用車市場はほぼすべて外国メーカーブランドで占められ、強いのは独フォルクスワーゲン、伊フィアット、米ゼネラル・モーターズ。それぞれ20%前後のシェアを占める。その3強の後に米フォード・モーター、仏ルノー、仏プジョーが続いて、日本メーカーは第3グループを形成している。ホンダ、トヨタ自動車、日産自動車のシェアはそれぞれ2~3%といったところ。

 そこに割って入り、一気に抜き去らんという勢いなのが韓国メーカーだ。2010年のブランド別販売台数で現代自動車は前年比5割近く販売を伸ばした。わずか5年前には存在感はほとんどなかったのだが、直近の月間ベースのシェアで見ると、現代ブランド車はトヨタ、日産を追い抜き、ホンダに肉薄している。

サッカーW杯でもアピール

 もちろん、日本勢も巻き返しに動いてはいる。トヨタが2012年に小型車工場を稼働し、日産も2016年度までの中期経営計画の中で年産20万台の工場新設を予定している。

 それでも、韓国勢が消費者へのアピールを一層強めていくことは確実。ブラジルの「国技」とも言えるサッカーのワールドカップ(W杯)を2014年に控え、現代自動車と起亜自動車は国際サッカー連盟(FIFA)の公式スポンサーの座を射止めている。

 ブラジル市場は、2010年にドイツを抜いて、中国、米国、日本に続く世界第4位の自動車市場となった。自動車メーカーの将来を左右するブラジルでの勝負も熱を帯びる。日本勢はどう巻き返すのだろうか。

(細田 孝宏 ニューヨーク支局)

日経ビジネス2011年10月3日号 124ページより目次

この記事はシリーズ「世界鳥瞰(2011年10月3日号)」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。