今号の特集に掲載した100の技術の中に、遠隔医療システムがあります。過疎地の患者が遠くの病院に出向かなくてもよくなり、高齢化と医師不足が深刻な日本の医療の救世主と言えます。海外からの引き合いもあります。

 ですが現実には、国内の遠隔医療は普及には程遠い状況です。医療行為は患者との直接応対が原則で、現行制度では医師は診療報酬をほとんど得られないからです。技術は、使われなければ進歩しません。技術立国を標榜するのであれば、使う側である国や社会の意識改革も必要です。

(伊藤 正倫)

 昨日の常識は明日の非常識。現代では時代の流れについていくことは、容易ではありません。しかし、技術の世界は、はるかに先を行きます。常識を覆さなければ、革新的な技術の進歩はありません。今回の特集で取材した多くの技術者、研究者たちは日々、常識との戦いを続けていました。

 これは孤独な作業です。取り組んでいるテーマの先に待つのが成功なのか、失敗なのか、誰にも分かりません。努力、信念、そして幸運に恵まれた技術にのみ光が当たります。現代の社会を支える技術のすごさと奥深さに、改めて頭が下がる思いです。

(阿部 貴浩)
日経ビジネス2011年10月10日号 100ページより目次