オリンパスや大王製紙問題で露呈した企業統治の不全。国会などで会社法の改正に向けた動きが本格化している。統治機能の信頼回復なしには、日本株離れが進みかねない。

 会社法改正に向けた動きが本格化している。法務省・法制審議会が検討会を重ねており、12月中にも試案をまとめてパブリックコメント(意見公募)に諮る構えだ。

 改正に向けた動きは、与野党にも見られる。与党・民主党では11月10日に大久保勉・政調副会長を座長とする「資本市場・企業統治改革ワーキングチーム」が発足。一方、野党・自民党も翌11日に「企業・資本市場法制プロジェクトチーム」(座長は塩崎恭久・元官房長官)を発足させた。

 会社法改正の動きを加速させたのは、オリンパスの長年にわたる不正会計問題や、逮捕された大王製紙前会長の巨額の借入金問題だ。社外監査役制度が十分な機能を発揮せず、取締役会も代表取締役の行動を牽制できなかった。日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)の不全が露呈し、日本企業や市場の信頼性を損ねた。

 主な改正のポイントは、「社外取締役選任の義務化」「監査・監督委員会制度の導入」「2段階代表訴訟制度の導入」の3つだ。

企業不祥事の発生を防げるか
会社法改正の主なポイント

 社外取締役選任の義務化の狙いは、取締役会における経営の執行と監督の分離の明確化や監査の強化にある。

 一方の監査・監督委員会制度の導入は、監査・監督委員会(3人以上)を設置する場合、そのうちの過半数を社外取締役とする案だ。

経団連は反対するが…

 日本の上場企業は委員会設置会社や監査役設置会社のどちらかの形態を取る。監査・監督委員会設置会社は第3の形態と言える。主に社外取締役で構成する委員会設置会社と、監査役だけが社外から半数以上という監査役設置会社の中間的存在だ。

 いずれの改正案も社外取締役の機能強化が焦点となる。これまでも、海外投資家を中心に、社外取締役設置の義務化の声は強かった。だが、日本経済団体連合会が、「諸外国の法制度の安易な移植を避け、日本の社会・風土に適した会社法案を実現すべき」と反対していた。特に、社外取締役設置の義務化については、「一律・形式的なルールは、企業の自主的なコーポレートガバナンス体制を制約する」として、法改正に異を唱えていた。

 だが、「抵抗勢力」だった経団連も、オリンパスと大王製紙の不祥事を前にしては大っぴらに反対を唱えるのは難しい。

 3つ目のテーマである「2段階代表訴訟制度の導入」は、親会社の株主の保護が目的だ。例えば、子会社の取締役が不正に手を染め、親会社に損害を与えて企業価値を損ねた場合などに、親会社の株主が子会社の役員に対して代表訴訟ができるようにするものだ。改正が実施されれば当然、訴訟の対象が広がることになる。

 経団連は、子会社といえどもあくまで別個の法人格を有するために法的に独立した存在であり、子会社の経営は一義的に子会社役員の責任だと主張している。親会社株主に、子会社役員に対して代表訴訟を起こす権利を与える必要はないとの考え方だ。ただ、前会長が、子会社に対して借り入れを迫った大王製紙の一件を考えると、子会社の独立性には疑問符をつけざるを得ない。

 今後の動きについて、会社法に詳しいある弁護士は「政府・与党は次の衆院選の期限である再来年の夏までに法案を通したいのでは」と予測する。

 企業統治の機能不全が招いた不祥事の代償は、あまりにも大きい。失った国内外の信頼を回復しなければ、海外投資家を中心に日本株離れが加速しかねない。ステークホルダー(利害関係者)や社会の厳しい視線が日本企業の経営に注がれる今、会社法改正の動きは止めようがないだろう。

(白壁 達久)
日経ビジネス2011年11月28日号 14ページより目次

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