(写真:スタジオキャスパー)

『大震災後の日本経済』
野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)
ダイヤモンド社 1575円
ISBN978-4-478-01612-1


増税・円高でインフレ回避

 「東日本大震災によって、日本経済を束縛する条件は、『需要不足』から『供給不足』へと180度変わった」というのが、本書の出発点となる認識である。

 震災で生産設備が損壊し、電力供給能力も大幅に低下するため、生産を拡大することができなくなる一方、復興のために巨額の投資が必要になるからだ。

 こうした超過需要の経済環境で、復興財源として大量の国債を発行すれば、金利が上昇し、激しいインフレーションを起こすという。これまでは「企業の資金需要が低水準のままであった」ため、長期金利が高騰することはなかった。しかし復興が本格化すると、資金需要に応えるために、金融機関は国債売却を加速して金利が上昇する。そこで国債暴落を回避するために、日銀が大量に国債を購入することでハイパーインフレが生じてしまう。だとすれば、消費は抑制されるが、法人税、所得税、電力税などの増税の方が痛みは少ないというのが著者の見立てである。

 さらに、著者は円高も積極的に容認する。円高になれば輸入が増え、国内の生産制約を緩和する働きをするからだ。その分、日本の輸出産業の収益率は低下するが、製造業の生産拠点は海外に移し、サービス業中心の脱工業化を推進していくことが、著者による日本経済の青写真。そのためには、「1ドル=50円台や60円台でもびくともしない経済をつくること」が長期的な観点で最も重要な経済政策だと主張する。

(写真:スタジオキャスパー)

『経済復興』
岩田 規久男(いわた・きくお)
筑摩書房 1260円
ISBN978-4-480-86412-3


増税なしの財政再建は可能

 関東大震災、戦争、阪神・淡路大震災という3大災禍後の経済政策を振り返りながら、東日本大震災の復興財源、街づくり、エネルギー政策を論じている。

 財源について、著者のスタンスは明快だ。復興予算は、2011年度が10兆円程度、今後5~6年にわたって総額40兆~50兆円程度と試算し、その財源を「日銀引き受けの復興国債の発行」に求めている。

 大量の国債発行は財政破綻のリスクを強めるという懸念に対しては、「長期国債金利(10年もの新発債金利)は2010年3月よりも財政の見通しが悪化した2011年3月現在のほうが0.1ポイント低く、国際金利が急騰する心配はない」という。

 国債を民間ではなく、日銀の引き受けにするのは、前者の効果が「財政支出の乗数効果で終わりである」のに対し、後者はそれに加えて、財政支出した分だけ民間が使うことのできる貨幣も増加することで、さらなる需要拡大効果が発揮されるからだと説明する。

 著者は取るべき財政金融政策の範を、昭和恐慌時の高橋是清蔵相に見る。具体的には、復興が軌道に乗るまで、4%のインフレ目標を設定して、マネタリーベースを大きく増やし、「市場に穏やかなインフレ期待を抱かせる」。これに成功すれば、経済成長による税収増や円安による輸出増大につながる。このデフレと円高からの脱却は、震災以前から著者が一貫して唱え続けている提言である。

(企画・文:連結社)
日経ビジネス2011年10月31日号 120ページより目次