1980年代から90年代にかけては、金融機関や商社を中心に海外MBA(経営学修士)派遣が脚光を浴びた。だが、MBAを取得して帰国した人材がその後の待遇に満足できず離職するケースが相次いだため、今では日本企業の海外MBA派遣人数はピーク時の1~2割に減少してしまった。日本企業のグローバル人材育成は、いまだに試行錯誤の途上にある。

 そうした過去の経験を踏まえつつ、近年、多くの日本企業は再び、語学留学や実務研修などの形で若手社員の海外派遣に力を入れるようになった。日本企業にとってグローバル化が避けて通れない課題になっているにもかかわらず、海外現地法人を経営できる人材が圧倒的に不足していることがその理由だ。

OJTからの脱却必要

 多くの日本企業の場合、海外現地法人の駐在員は1~2カ月前に海外赴任の内示を受け、数日間の赴任前研修を受けただけで海外に派遣される。確かに昔は「行けば何とかなる」という風潮があったが、現在は中国をはじめとする新興国の人材の教育水準も高まっており、精神論のようなやり方だけでは現地の人材を管理できなくなっている。

 現地法人の幹部で英語が話せないのは日本人駐在員だけ、というケースさえある。現地採用の社員よりも高い給与を得ているにもかかわらず、経営会議で発言することもできなければ、現地法人全体の士気を下げてしまう結果にもなりかねない。

 今、日本企業がこぞって若手社員らを海外に派遣している背景には、こうした海外現地法人における経営層の人材不足を、時間をかけて解消する狙いがある。柔軟性や吸収力の高い若者の方が、語学習得などに有利であるため、海外派遣の対象者は入社1~2年目の若手や内定者などに若年化しつつあるのだろう。

 ただ、若手社員の海外派遣が悪いわけではないが、どうも現状を見る限りでは日本企業はOJT(職場内訓練)の発想から抜け出せていない気がする。海外の住居を自分で手配したり、現地の人々と交流したりするだけで海外でのビジネスに必要な資質が備わるわけではない。

 海外現地法人の経営を担う人材には、プレゼンテーションなどのコミュニケーション能力や異なる言語・文化への対応力が求められる。そういったスキルセットを持った人材を育てるには、専門の教育機関などと連携して体系的に学ぶ環境を整える必要があるのではないか。(談)

日経ビジネス2011年11月14日号 121ページより目次