中国市場に再挑戦したモスフード。焼き肉のライスバーガーは使用食材が分かりやすく人気だ

 本号の日経ビジネスは、世界の伸びゆく都市はどこかというテーマで特集を組んだ。ランキングに出てくる都市を眺めて、改めて感じたのは自分の知識の乏しさだった。デリーやムンバイは知っていたが、ダッカやラゴスとなると「聞いたことがある」程度。恥の上塗りになるが、中国でも知らない都市があった。

 日本企業の中国進出は今や珍しくないが、その多くは日本でも有名な大都市への進出を意味してきた。消費地と見た場合、1人当たりのGDP(域内総生産)が1万ドル(約77万円)を超えた上海や北京が候補となる。生産地なら広州や深圳など沿岸部の大都市に工場を構えるのが定石だ。その意味で、2010年に「モスバーガー」を廈門(シャーメン)に出店したモスフードサービスは異色と言える。

 「アモイ」の名でも知られる廈門は台湾の対岸にある福建省の2級都市だ。1人当たりGDPは2010年末時点で6062.55ドル(約47万円)と、トップの上海の半分程度。だが人口は約353万人と多く、これは大阪市の約267万人や名古屋市の226万人を大きく上回る。市としては日本で最も人口の多い横浜市(約369万人)に匹敵する規模だ。都市として“2級”でも、商圏としては十二分に魅力的なのだ。

2級都市だからこその利点

 実はモスフードにとって中国進出は2度目だ。1994年に初めて進出した先は上海だったが、パートナーのヤオハンの経営不振などが原因で、わずか3年で撤退を余儀なくされた。13年ぶりのリターンマッチで選んだ進出先がアモイだった。

 アモイへ乗り込むに当たりモスバーガーは過去の「経験」を十分に研究した。既に進出している台湾ではパートナーとなっている安心食品服務と強固な関係を築いており、そのパートナーが地の利を生かせる福建省を中国再進出の足がかりとした。

 既に述べたようにアモイの人口は十分に巨大で、台湾との貿易で栄える港湾都市として成長性も申し分ない。一方、上海や北京に比べ人件費や家賃はかなり低いため、損益分岐点を大きく引き下げられる。台湾市場は今でこそ順調に成長しているが、「モスバーガーのブランドが浸透するまでは苦しかった」と現地法人の青木賢二・副総経理は振り返る。「小さく生んで大きく育てる」という戦略は中国で成功を収めるために重要なポイントだ。

 実際に店舗を運営しているからこそ得られた知見も少なくない。例えば中国市場では、使用している食材が一目で分かる商品がよく売れる。

“ハンバーガー”は人気なし

 いわゆるハンバーガーはどんな肉が使われているかが分かりにくいため人気が低く、一枚肉のチキンバーガーの方が販売数は多い。また、パンの代わりに米飯を使用したライスバーガーは、ライバルである「マクドナルド」や「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」にはない商品だけに看板商品となっている。中でも、焼き肉を挟んだライスバーガーは使用食材が分かりやすいので最も人気が高いという。

 2011年下期からはアモイ以外の福建省の都市にも出店を開始、2012年には北の浙江省にも進出する計画だ。そのまま北上すれば、かつて撤退した上海にも再進出を果たすことになる。

 モスフードの海外店舗数は2011年8月末時点で261店。8年後の2019年までには1800店に引き上げ、そのうちの1000店を中国大陸で展開する計画だ。その意味でもアモイの成功が重要な試金石となっている。

(坂田 亮太郎 北京支局)

日経ビジネス2011年10月24日号 112ページより目次

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