独自に調査した「伸びゆく世界都市ベスト100」を一挙に公開する。成長都市にはどんな特徴があり、どのように攻めればいいのか。本調査を共同で実施したアクセンチュアのコンサルタントが、タイプ別に分析する。

後藤 浩
アクセンチュア
公共サービス・医療健康本部 エグゼグティブ・パートナー

 「伸びゆく世界都市ベスト100」では、ブラジル、ロシア、インド、中国のBRICs諸国をはじめとする新興国の都市が80以上ランクインした。

 2001~10年の間に世界経済に占める新興国経済の割合が20~35%に急増したことからも、21世紀最初の10年は新興国都市が台頭した時期として経済史に刻まれることになりそうだ。

 企業が今後打って出るべき都市の成長要因をキーワードで示すと、(1)政府(2)民間(3)資源(4)復興――となる。これらの要因が組み合わさり、都市は成長を遂げており、そのタイプは大きく5つに分類できる。ビジネスパーソンが今後、成長都市とどのようにつき合っていくべきか。タイプ別に見てみよう。

(1)政府と民間の相互作用型

 政府が産業政策や公共インフラ投資を推進し、国内外の民間企業の経済活動を支援していく形でバランスよく成長した都市である。デリー(1位)、ムンバイ(2位)、スーラト(8位)などインドの都市や、バングラデシュのダッカ(3位)、中国の天津(17位)、上海(21位)、深圳(22位)、広州(24位)、など中国の沿海部の都市などがここに分類される。このタイプの都市は、政府がグローバル企業の誘致を目的とした経済特区を設置して税制面などでの優遇施策を取るなど、外資企業に対する門戸が広い。

 日本の製造業にとっては、研究、開発、生産など様々な機能を移管させる候補として有力な都市である。特にデリーやムンバイなどには、優秀な人材が集まっていることから、研究開発拠点を新設する企業が増えている。

 活気があり多くの商機が見込めるものの、道路・鉄道など公共インフラの整備が、都市の成長に追いついていない。交通渋滞が慢性化しており、企業は物流面での工夫が求められる。

(2)政府主導型

 政府と国営銀行、国営企業が三位一体となって開発・発展している都市。重慶(6位)、成都(55位)といった中国内陸部の都市や、ヨハネスブルク(78位)がその代表だ。特に中国内陸部では「西部大開発」と呼ばれる鉄道、ダム、資源の大規模開発プロジェクトが2000年代初頭から進められている。マンションやショッピングモールなどの不動産の開発も進む。

 政府による投下資本額は民間によるものと比較して巨大であることから、産業機械や建設・プラント、不動産といった業種には大きなビジネス機会が広がっている。また、近年注目を浴びる日本のインフラ技術の輸出についても大きなチャンスがあるだろう。

 だが、政府の描く構想の実現可能性は未知数な点もある。収益性を度外視した都市インフラ構築事業も少なくない。さらに、政府主導型都市は、民主化運動や独立運動などによって、政治情勢が不安になることも少なくないため、カントリーリスクがある点に留意すべきだろう。

(3)資源主導型

 2000年代中盤から顕著になった原油や鉄鉱石、石炭、レアメタル(希少金属)といった天然資源の高騰による恩恵を受けて発展を遂げている都市を指す。

 ナイジェリアのラゴス(4位)やモスクワ(51位)などが該当する。今回の調査では人口300万人以上の都市を対象にしたためランキングに入らなかったが、アラブ首長国連邦のドバイもこの分類に当てはまる。同市はオイルマネーによって異常な速度で近未来的な都市に変貌したが、原油価格の下落に伴い急速に成長が行き詰まった資源バブル型の典型だ。

 資源価格の動向次第で成長性が大きく左右される都市だけに、ビジネス進出の計画を立てることは意外と難しい。しかし、国の経済政策などによってビジネスチャンスが広がる可能性は十分にあり、その動向はつぶさにウオッチしておきたい。

 例えば、2010年夏から、ナイジェリアのラゴスは中国と協力して輸出企業向け経済特区である「レッキ自由貿易区」の開発を始めた。この開発が成功すれば、?の都市と同様のビジネスの機会が生まれる可能性がある。

 いずれにせよ、資源価格高騰の恩恵を受けて、これらの都市に住む市民の生活レベルは向上しており、家電メーカーや住宅メーカーといった産業にとっては、新たな市場としての可能性を秘めている。

(4)復興・資源相乗型

 紛争の終焉を契機とした人口の再流入や経済活動の再開と、天然資源の高騰のタイミングが合致して大きな発展を遂げた都市である。アンゴラのルアンダ(5位)などがここに分類される。

 ルアンダは、27年間にわたる内戦が2002年に終結して以来、多くの外国人労働者が石油関連事業の仕事を求めて流入し、空前の経済成長を遂げている。ただし、復興の途中段階であり、現時点では日本企業にとってのビジネスチャンスはあまり多くはない。治安に不安もあり、ルアンダは安全な住居の確保が困難であることが影響し、「駐在員が住むために最もコストがかかる都市」である。ただ、成長余力は大きいので、現地で市場・産業動向を調査するなど準備はしておくべきだ。

(5)バランス型

 資源の高騰、政府の政策、民間の成長といった3つがバランスよく重なり、発展を遂げた都市。サンパウロ(12位)、クリチバ(33位)などのブラジルの都市がここに該当する。

 いずれも鉄鉱石や農作物の高騰によって成長のきっかけをつかみ、資源高によって得た資金を元手に、バイオエタノール燃料の生産や自動車、航空機といった製造業を戦略的に育成することに成功している。

 サンパウロやクリチバなどブラジルの都市では、ガソリンとエタノールの両方で走る「フレックス車」が普及している。原油が高騰した際には、サトウキビからエタノールを生成するといった政策も推進する。

 見逃せないのはブラジルで今後、サッカーのワールドカップ(2014年)や五輪(2016年リオデジャネイロ)の開催が予定されていることだ。水や道路といったインフラや治安などの面には課題が多いが、そこに商機がある。インフラに対しては、世界中の様々な業種業態の企業が既に営業活動を進めている。日本企業も現地でのパートナー戦略も含め、本格的な進出を検討しないといけないだろう。

都市の発展は5つに分類できる
成長都市の類型と攻略法
日経ビジネス2011年10月24日号 48~52ページより

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